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論文要旨

Vol. 61, No. 3, pp. 261-285 (2010)

『「ロシア病(Russian Disease)」の病理と診断―成長と構造の再検討―』
久保庭 眞彰 (一橋大学経済研究所)

本稿は、原油価格変動に翻弄される石油依存経済ロシアの現状を「ロシア病」として把握し、その病状について、成長と産業構造の視点から調査し、診断を行うことを意図した試論である。まず、第1に、油価変動と成長、為替レート、通貨代替の関係を統計的に分析し、油価変動がロシア経済成長と経済行動の全体を強く支配していることを示す。第2に、交易利得変動と実質国内総所得(GDI)について理論的に整理し、その後、BRICs、日米、産油国(サウジアラビア、ノルウェー)の8ヵ国について油価の影響を中心に比較検討する。第3に、石油・ガス産業のロシア経済における位置を確定し、その成長と、油価上昇のもとでしか生まれない製造業成長の特徴と問題点を明らかにする。最後に、ロシア経済の潜在成長能力、最適産業構造、最適成長経路をノイマン理論とターンパイク理論の適用により明らかにする。