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論文要旨

Vol. 61, No. 3, pp. 214-223 (2010)

『インターネット時代のチャネル管理―均衡と厚生―』
成生 達彦 (京都大学大学院経営管理研究部), 王 海燕 (日本学術振興会外国人特別研究員), 中山 雄司 (大阪府立大学経済学部)

本稿では、空間的競争モデルを用いて、独占的生産者がインタ-ネット販売チャネル(以下では「ネットチャネル」と略す)を導入するための条件、およびそのことが消費者の厚生や経済厚生に及ぼす効果について検討する。主要な結論はまず第1に、消費者の移動費用が高く、かつネットチャネルの配達費用が低い場合に、生産者はネットチャネルを導入するというものである。第2に、当初すべての消費者が財を購入していた状況では、ネットチャネルの導入によって消費者厚生は悪化する。一方、当初一部の消費者が財を購入できなかった状況では、配達費用がある程度高ければ、ネットチャネルの導入によって消費者厚生は向上し、このときにはいかなる消費者の厚生も減少しない。第3に、ネットチャネルの配達費用が低い場合には、その導入は経済厚生を向上させる。そして最後に、配達費用がある程度高い場合には、ネットチャネルの導入はパレ-トの意味での改善となる。