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論文要旨

Vol. 60, No. 1, pp. 47-59 (2009)

『配当政策と経営者持株―エントレンチメントの観点から―』
久保 克行 (早稲田大学商学研究科), 齋藤 卓爾 (京都産業大学経済学部)

本論文では,経営者の持株と配当政策の関係を分析した.多数の株式を持つ経営者は,自ら望む行動を取ることができるようになるため,自分の収入を増加させるために配当政策を決定するという可能性がある.本論文では,この仮説を検証するための実証研究を行った.実証分析の結果,赤字企業でも,赤字かつ投資機会が多い企業でも,経営者の持株が大きいほど配当を支払う傾向にあり,多額の配当を支払っている.一方,黒字企業を対象に行ったトービット分析の結果によると,経営者の持株と配当の間には有意な関係が見られなかった.すなわち,経営者の持株比率が高い企業では,配当を支払うべきではない状況でも配当を支払っていると解釈することができる.これらの結果は本論文の仮説と整合的である.