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論文要旨

Vol. 60, No. 1, pp. 16-28 (2009)

『体制移行・組織分化・ガバナンス―予算制約と取引費用の経済学―』
ブルーノ ダラーゴ (トレント大学経済学部)

移行経済の考察から,ガバナンス構造は取引費用を最小化する方向に決定されるという取引費用経済学の想定は,この予想の基礎にある人間の特性は競争的市場経済において典型的なそれと移行経済のそれでは異なり得る,という可能性によって補完されねばならないことが明らかとなる.概念装置としての予算制約は,取引費用の性質,水準及び構成とそれらを通じた組織的ガバナンスの効率解を決定付ける行動変数の一つと見なされる.そしてこのことは,企業統治は,組織内部の利害衝突を回避し,非契約的特殊的投資を実行する人々に対して,信頼に値する保護とインセンティブを与えるものでなければならないという定義を与える.この事実は,異なる国々における組織と企業ガバナンスの異質なシステムの共存に関する理解に道を開き,移行諸国における代替的企業組織と統治形態の比較優位を分析する可能性をもたらす.