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論文要旨

Vol. 59, No. 1, pp. 16-29 (2008)

『不確実性下における参入抑止投資の分析―リアルオプションアプローチ―』
嘉本 慎介 (大阪大学大学院経済学研究科大学院生)

本稿は,リアルオプション理論を応用し,潜在的競争企業の参入費用を上昇させ,参入を抑止する既存企業の戦略的な参入抑止投資の意思決定に不確実性が与える影響を分析する.本稿のモデルでは,参入抑止投資の最適な閾値が,既存企業と潜在的競争企業の意思決定の戦略的な相互作用によって決定される.需要の不確実性の増加は,潜在的競争企業が参入するインセンティブを低下させるため,既存企業が参入の抑止をはかるインセンティブも低下し,参入抑止投資を先送りすることが示される.また,大規模な参入抑止投資ほど,実施が早くなることも示される.さらに,数値計算を用いて,参入抑止投資の最適な閾値と規模に対する不確実性の影響を考察する.不確実性の増加が潜在的競争企業の参入を強く抑止し,参入抑止投資の効果を代替するため,既存企業が参入抑止投資を先送りし,規模も削減することが示される.