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論文要旨

Vol. 58, No. 3, pp. 203-216 (2007)

『アクティビストファンドの功罪』
井上 光太郎 (慶應義塾大学大学院経営管理研究科), 加藤 英明 (名古屋大学大学院経済学研究科)

本稿は,日本におけるアクティビストファンドの投資先企業の性格ならびに投資先企業に与える影響を実証分析したものである.具体的には,日本で活動する代表的なアクティビストファンドによる2000年から2005年の間の5%以上のブロック株式取得をサンプルとして,ファンドによる投資が投資先企業の株主価値増大に結びついているかを検証した.分析結果から,生産性は低くないものの,資本効率が悪く,株価も割安な企業をファンドがターゲットとしており,ほとんどのファンドの投資は投資先企業の株主価値を増大させていることを示した.しかし,もっぱら短期投資戦略を採用していた村上ファンドは,投資先企業の短期的な株価上昇には結びついても,長期の株主価値は増大させていなかった.これは,ファンドが規律付け効果を実現するためには,投資先企業への長期コミットメントが重要であることを示唆する.もっとも,その村上ファンドも,持分売却後の期間も含めて投資先企業の株主価値を減少させてはいない.