資産収益率の予測に関する研究において,ファイナンシャル・レシオ(キャッシュフロー変数と資産価格の比)を用いた予測回帰式(predictive regression)は重要な地位を占めている.本論文では,予測回帰式の小標本バイアスに関するStambaugh (1986, 1999),Lewellen (2004),Campbell and Yogo (2006)などの最近の研究を概観した上で,日本のデータに関する実証分析を行う.その結果,日本の短期的な株式収益率の予測可能性に関する統計的証拠は,従来考えられていたよりも強いものであることがわかった.一方,消費/総資産比率や労働所得/消費比率といった,他のファイナンシャル・レシオを用いた回帰式では,Stambaugh-Lewellenの修正の必要性が認められなかった.