HOME » 刊行物 » 経済研究

論文要旨

Vol. 58, No. 2, pp. 97-109 (2007)

『規範的経済学の非厚生主義的・非帰結主義的基礎―ピグー,ヒックス,センの連結環―』
鈴村 興太郎 (一橋大学経済研究所)

ヒックスは,ロビンズの批判を浴びて挫折したピグーの【旧】厚生経済学の廃墟のうえに,序数的で個人間比較不可能な厚生概念に基づく【新】厚生経済学を建設するうえで,リーダー的な役割を担った.その彼が,1950年代末に公表した《厚生主義との訣別宣言》は,規範的経済学の重要な転機であった.本稿の第1の課題は,1950年代-1960年代に書かれたヒックスの2つの未公刊の文書をも考慮しつつ,ピグーからセンに到る規範的経済学の展開過程でヒックスが果たした役割を評価することである.本稿の第2の課題は,セン以降に開始された非厚生主義的・非帰結主義的な規範的経済学の展開過程で本稿の筆者が推進してきた2つのアプローチを,ピグーからヒックスを経てセンに到る規範的経済学の情報的基礎を巡る展開を背景に,簡潔に述べることである.第1のアプローチはゲーム形式の権利論であり,第2のアプローチは帰結主義と非帰結主語の公理的特徴付けである.