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論文要旨

Vol. 58, No. 2, pp. 136-150 (2007)

『交渉問題における分配的正義論』
吉原 直毅 (一橋大学経済研究所)

協力的交渉ゲームの解として知られるナッシュ交渉解,カライ=スモロディンスキー交渉解,平等主義解の性能比較を,分配的正義の基準を体現する公理体系を用いて,分析する.交渉問題のクラスとして,(1) 凸問題のクラス; (2) 非凸問題のクラス; (3) 生産経済の下での資源配分問題のクラス,以上3つを考える.分配的正義の基準として,ここでは (1)最小限の衡平性原理としての対称性基準; (2) 連帯性原理の基準; (3) 「責任と補償の原理」の基準,以上3つの分類を考え,それぞれの精神を体現する公理体系を提示した.その上で,交渉問題のクラス(1)と(2)においては,対称性原理と連帯性原理の観点から,3つの解の中で最も優れた性能を有するのは,平等主義解であると評価可能である.他方,交渉問題のクラス(3)においては,「責任と補償の原理」の観点から,3つの解の中で最も優れた性能を有するのは,ナッシュ交渉解であると評価可能である.