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論文要旨

Vol. 58, No. 1, pp. 61-90 (2007)

『年功賃金は生産性と乖離しているか―工業統計調査・賃金構造基本調査個票データによる実証分析―』
川口 大司 (一橋大学大学院経済学研究科), 神林 龍 (一橋大学経済研究所), 金 榮愨 (一橋大学大学院経済学研究科大学院生), 権 赫旭 (日本大学経済学部), 清水谷 諭 (一橋大学経済研究所), 深尾 京司 (一橋大学経済研究所), 牧野 達治 (一橋大学経済研究所非常勤研究員), 横山 泉 (一橋大学大学院経済学研究科大学院生)

本論文では,1993年から2003年について,賃金構造基本統計調査と工業統計調査の事業所データをマッチングして事業所レベルのパネルデータを作成し,年齢に関する生産性プロファイルと賃金プロファイルを同時に推定し,両者の傾きの違いを検証した.これにより労働属性別に労働生産性と賃金率の間の格差を算出した.我々は,日本の製造業では賃金プロファイルの傾きの方が,生産性プロファイルの傾きよりも大きく,従って,若年労働者は生産性以下の報酬を,中高年労働者は生産性以上の報酬を得ているとの結果を得た.
 我々はまた,この分析結果を利用し,労働者の属性ごとの生産性の違いを,賃金情報ではなく「真」の属性別生産性の情報で捉えることにより,JIP2006データベースおよび将来の労働投入予測における労働投入指数,労働の質指数の推計結果がどの程度変化するかを1970-2050年について,主にマクロレベルで分析した.