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論文要旨

Vol. 57, No. 4, pp. 344-357 (2006)

『国民年金・国民健康保険未加入者の計量分析』
湯田 道生 (一橋大学大学院経済学研究科大学院生/日本学術振興会特別研究員)

社会保険制度の未加入問題は,各社会保険の財政問題に留まらず,社会保障制度全体の問題として拡大する可能性があるという背景を踏まえて,本稿では未加入選択と未加入期間という二つの視点から国民年金・国民健康保険未加入者の分析を行った.
 『消費生活に関するパネル調査(家計経済研究所)』の個票データを用いた実証分析の主な結果は以下の通りである.第一には,いずれの社会保険制度においても,各保険料率の上昇は,それぞれの未加入選択には影響を与えるが,未加入者の未加入期間には影響を与えないことが確認された.第二には,一方の社会保険の加入状況が他方の社会保険の加入状況に影響を及ぼさないことが確認された.第三には,民間保険加入者ほど社会保険の未加入確率が低いことが確認された.また,特に国民年金に関しては,若年層の高い未加入率は,世代間の受益と負担の格差に起因するものではなく,年齢によるものであると判断される結果を得た.