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論文要旨

Vol. 57, No. 3, pp. 208-223 (2006)

『ロシアにおける地域間人口移動―Origin‐to‐Destination表の利用―』
雲 和広 (一橋大学経済研究所)

本研究はロシアの地域経済状況と,それが地域間人口再配置に与える影響とを検討するものである.旧ソ連崩壊後におけるロシアの地域経済と人口移動パターンとを概観したのち,ロシア連邦統計局より提供を受けた未公開の地域間人口移動行列表を利用し重力モデルを適用した分析を行う.
 先行研究は,あるものは大きなデータ上の問題を抱えていた.あるいは地域間の距離そして気象条件という一般的なもの以外の地理的要因に対する着眼がなされていないという側面が見られたが,本稿の分析はそれを明示的に扱うことを試みた.2000年以降に関わる地域間人口移動のOD表を本領域で初めて利用し,国際的な石油価格の高騰と相まって安定的にロシアが経済成長を見せる中,天然資源を産出する地域の優位性と首都モスクワの卓越ぶりとが示された.また移行過程の進展状況に関する示唆を得ることが出来た.