HOME » 刊行物 » 経済研究

論文要旨

Vol. 56, No. 3, pp. 218-233 (2005)

『予測機関の予測形成様式』
浅子 和美 (一橋大学経済研究所), 山澤 成康 (跡見学園女子大学マネジメント学部)

本稿では,17の個別予測機関の予測形成様式を考察対象として,経済予測が経済指標の実際の変動と整合的になされているか否かを検証する.まず,この分野の嚆矢ともいえる浅子・佐野・長尾(1989)をアップデートする分析を行い,個別予測機関の予測の的中具合など,多くの点でほぼ同様の結論が得られることを確認する.次いで,実積値のデータから時系列モデルの範囲で各予測項目の「夏のモデル」を探り,個別予測機関がその「真のモデル」を理解し有効に利用しているかを検証する.その結果,GDP成長率やインフレ率については,どの予測機関についても真のモデルと整合的に予測形成を行っているとの仮説を棄却することはできない.しかし,「真のモデル」を修正し財政金融政策の効果を導入すると,実績値には財政金融政策の効果が及ぶにもかかわらず,予測形成時にはその効果が顧みられないとの,合理的期待形成仮説にとっては否定的なインプリケーションが得られる.