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論文要旨

Vol. 56, No. 2, pp. 132-148 (2005)

『東アジア企業のガバナンスと設備投資―家族支配型企業に関する実証分析―』
花崎 正晴 (日本政策投資銀行設備投資研究所), 劉 群 (一橋大学経済研究所)

本稿では,東アジアのコーポレート・ガバナンスを特徴づける家族支配型の構造に焦点を当て,インドネシア,韓国,マレーシア,フィリピンおよびタイの5か国の企業データを用いて設備投資関数を推計し,家族支配が企業の設備投資行動に及ぼす影響を,定量的に分析した.その結果,全体の過半を占める家族支配型企業は,家族支配から独立している企業に比べて,設備投資の内部資金制約が厳しいことなどが明らかになった.この事実は,東アジアの家族支配型企業グループ内で,各傘下企業が円滑なグループ内金融を通じて設備投資資金を融通し合うなどのメカニズムが有効に働いているとは言い難く,加えて外部資金調達が量的あるいは質的な面で必ずしも容易ではなく,結果として設備投資が内部資金にかなりの程度制約を受けていることを示すものであると解釈できる.