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論文要旨

Vol. 55, No. 4, pp. 313-327 (2004)

『財政政策の非ケインジアン効果―県別データによる検証―』
伊藤 新 (一橋大学大学院経済学研究科大学院生), 渡辺 努 (一橋大学経済研究所)

本稿ではわが国の県別個人消費データを用いて財政政策の非ケインジアン効果仮説を検証する.非ケインジアン効果仮説によれば,県別の個人消費は,(1)国の財政事情に問題がない時期には各県の租税負担割合に左右されないが,(2)財政状況の悪い時期には租税負担の高い県の個人消費が他県に比べ低くなるはずである.1955-2001年度の県別データを用いて推計した結果,財政悪化期に租税負担の高い県の消費が相対的に低下する傾向が存在し,統計的に有意であることが確認された.この傾向は,地価の変動や雇用情勢の変化など県別消費の分布に影響を及ぼす可能性のあるその他の要因をコントロールしても変わらない.本稿の分析結果は,非ケインジアン効果が1990年代後半以降の消費低迷の一因である可能性を示唆している.