本研究では,内閣府経済社会総合研究所の潜在成長力プロジェクトチーム(主査:深尾京司一橋大学教授)で作成された,JIP(Japan Industry Productivity)データベースから作成されるIT投資の動向を国際比較も含めて検証した.加えて,ハードの産業別IT投資データをパネル化し,実証分析を行った.まず,日本のIT投資は,ハード,ソフトの両面で量的に見ると,米国または他のOECD諸国と比較してもそれほど遜色のない規模であった.また,投資関数による実証分析の結果,資本コストの係数がマイナスに有意となり,2003年度から実施されている投資減税の根拠が得られ,スピルオーヴァー効果も合わせて確認された.さらに,2003年度のIT投資に関する優遇税制の効果を試算すると,1兆円程度の新規IT投資が促進される事が示された.