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論文要旨

Vol. 55, No. 3, pp. 193-203 (2004)

『戦前日本における体位の決定要因―東北一農村の壮丁検査記録分析―』
斎藤 修 (一橋大学経済研究所)

本論文は,経済発展の初期段階における体位の決定要因を明らかにする試みである.所得成長が始まっても,人びとの体位は十分なかたちでは向上しないことがしばしばあった.その原因として従来の研究は人びとの移動と都市化に注意を向けてきたが,本稿はそこに農村的要因も介在していたことを示唆する.依拠するデータは,例外的に豊かな情報をもつ,東北一農村の壮丁検査記録である.そのミクロ分析の結果は,父親の体位をコントロールすることで頑健な計測が可能となること,体位を引き下げる方向で作用していた2つの異なった要因があったことを示す.その要因の第一は壮丁の農村からの移動経験で,エクスポージャを通して主として体重指標へ負の影響をもった.第二は農家女性の労働負担である.壮丁身長の農家所得にたいする弾力性が一般に想定されるよりも小さな値をとったことから,この要因が無視できない役割を果していたことがわかるのである.