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論文要旨

Vol. 55, No. 2, pp. 97-110 (2004)

『ロシア経済と天然資源』
栖原 学 (日本大学経済学部)

ソ連崩壊以降のロシアの市場形成過程において,かつての軍事大国を支えた機械工業などの多くの部門が没落する一方で,石油・ガス部門は,その重要性を増していった.とりわけ1998年の経済危機以後の回復過程において,同部門は主要な駆動力として経済を牽引した.このように,短期的に見た天然資源部門の重要性は明らかであるが,最近における世界の鉱物資源国の実績からして,同部門の存在は,かえってロシア経済に災厄をもたらす可能性がある.二つの主要な理由を挙げれば,一つには,天然資源産業が稼得する経済レントの分配をめぐって社会的混乱がもたらされる危険性があるということであり,また天然資源の輸出によって為替レートが上昇し,天然資源以外の産業に打撃を与える可能性があるということである.ロシアが持続的な経済発展を遂げるためには,これらの困難に対処しなければならないだろう.