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論文要旨

Vol. 55, No. 2, pp. 155-170 (2004)

『1927年銀行法の下での銀行の集中と貸出』
寺西 重郎 (一橋大学経済研究所)

1927年3月に公布され1928年1月から施行された銀行法は,その後5年間にわたって大規模な銀行と整理と合同の過程をもたらした.この論文では,銀行法とそれに誘発された銀行合同と銀行の解散・廃業等が貸出とマクロ経済活動に及ぼした影響を分析する.
 銀行合同の個別データの集計作業から,合同進展の過程で大規模な銀行資本金の減額が行なわれ,その規模は解散や破産による資本金減少に匹敵するものであることが示された.合同に伴う銀行の減資は,吸収や買収の対象となった中小銀行の貸出の削減や経営陣の交替などによる情報チャンネルの破壊をもたらした可能性が強い.
銀行法による銀行整理の貸出に及ぼした負の影響は,1928年から1932年の全期間にわたってみられるが,特に1928,1929年の2年において顕著であったと思われる.