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論文要旨

Vol. 54, No. 3, pp. 206-222 (2003)

『供給ショックと短期の物価変動』
渡辺 努 (一橋大学経済研究所), 細野 薫 (学習院大学経済学部), 横手 麻理子 (一橋大学大学院経済学研究科大学院生)

供給ショックとは特定の品目(例えば原油関連商品)の価格が他の品目に比べて変化すること、すなわち相対価格の変化である。本稿では、品目別価格上昇率の分布の歪みをみることにより供給ショック計測し、6ヶ国(日本、米国、英国、韓国、香港、台湾)を対象にその特性を調べた結果、以下のファインディングを得た。第1に、品目別価格上昇率の分布の歪みは消費者物価上昇率と統計的に有意な正の相関をもつ。この結果は、分布の歪みの計測方法、推計期間、推計方法に依存しない。ただし、正の相関は計測のタイムスパンに依存しており、5年単位の長期では相関が消える。第2に、各国の供給ショックは共変性をもつ。共変性は原油価格の変動に起因する部分が大きいが、原油関連品目を除いてもなお共変性が確認される。第3に、韓国を除く5ヶ国では、1990年代半ば以降、負の供給ショックが発生しており、日本、香港、台湾ではこれがデフレの一因になっている。日本で生じている負の供給ショックは各国と共通の要因で生じている可能性がある。