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論文要旨

Vol. 54, No. 2, pp. 97-113 (2003)

『日本の為替介入の分析』
伊藤 隆敏 (東京大学先端科学技術研究センター兼、一橋大学経済研究所)

2001年7月に公表され、その後、定期的にアップデートされている為替介入のデータ(観察期間、1991年4月から2002年3月)を用いて、利益、介入効果などの側面について考察を加える。この期間、125円よりも円安(円ドルレートが、126円以上)の水準での円売り・ドル買いの介入実績はなく、125円よりも円高(円ドルレートが、125円以下)の水準での円買い・ドル売りの介入実績は無かった。日本の通貨当局は、ドルをドル価値が安いときに購入し、高いときに売却していた。介入による売買益、評価益、金利差益の利益合計は、11年間で10兆円近くに上る。介入直前の為替レートの変化に比較して、介入直後の為替レートの変化が、介入の意図した方向に動いていたかどうかの介入の効果を検討すると、おおむね、意図された効果が得られていたといえる。回帰分析によると、1990年代の後半は、介入が統計的有意に為替レートに意図したように影響していることがわかった。効果の大きさは、アメリカと日本の同時介入が、通常の日本の通貨当局による単独介入よりも、20-50倍の効果を持つ。日本の通貨当局による介入のうち、一週間以上の間を置いたあと最初の介入は、そうでない場合よりも有意に大きな効果を持つことが分かった。