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論文要旨

Vol. 54, No. 2, pp. 126-136 (2003)

『リスク変数としての消費―消費/金融資産比率を用いた条件付きCAPMのテスト―』
祝迫 得夫 (一橋大学経済研究所)

消費に基づく資産価格モデルの実証分析においては、リスク・ファクターとしての消費変数は、資産収益率の変動に関してほとんど説明能力が無いことが日米のデータについて報告されている。本論文はLettau and Ludvigson(2001a, b)の提案にしたがって、株価に対する消費の比率の平均からの乖離を、条件つき資産価格モデルの条件付け変数(conditioning variable)として用いたモデルを日本のデータについて実証する。1984年4月から2000年3月までの月次データに関するFama-MacBeth回帰による分析によって、消費と株価指数の比の対数が、条件付け変数として株式収益率のクロスセクションについて重要な説明力を持つことを示す。ただし、消費と株価の比率は時間を通じてゆっくりと動く変数であり、株式市場の短期的な確率的変動を説明するリスク・ファクターというよりは、マーケット全体の状況に関する条件付け変数と考えた方が経済学的に妥当な解釈であろう。