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論文要旨

Vol. 54, No. 2, pp. 114-125 (2003)

『円安政策の効果』
宮尾 龍蔵 (神戸大学経済経営研究所)

円安誘導は、低迷する日本経済において需要創出効果が期待される数少ない政策オプションの1つである。本稿では、わが国における円安政策の効果を実証的に検討する。分析手法としては、為替レート、輸出、輸入そして金利(および生産)に基づく単純なベクトル自己回帰(vector autoregression, VAR)モデルを利用する。1975年から2001年の全期間について、為替(円安)ショックは、輸入を大きく減少させる一方、輸出に対しては有意な影響を及ぼさなかった。一方、輸出主導の成長が顕著であったとされる1980年代半ば(プラザ合意前後)までの期間では、輸出に対しても一定の効果があることが認められた。構造変化の可能性は、誘導形モデルに基づく安定性テストからも確認された。為替の変化が輸出に大きな効果をもたらすという仮説は、少なくとも近年のデータを見る限り自明ではなく、より慎重な政策判断が求められる。