HOME » 刊行物 » 経済研究

論文要旨

Vol. 53, No. 4, pp. 351-368 (2002)

『社会資本の資産評価』
浅子 和美 (一橋大学経済研究所), 野口 尚洋 (一橋大学大学院経済学研究科博士課程大学院生)

本論文では、社会資本(政府資本)の資産評価を行う。日本の社会資本については、今ではその生産力効果についてはかなりの実証分析の蓄積があるが、資本ストックの資産評価はほとんど行われてこなかった。本論文で問題とする社会資本の資産評価は、民間資本に対してと同様、その資本が産み出す収益を基に資本還元されるべきであるとの出発点に立つ。端的には、過去の資本投下額と対比されるべきものとしての帰属価値である。具体的には、民間資本に対しての「トービンのq」に対応する指標を、都道府県単位での社会資本について作成する。計測された社会資本のトービンのqは、全国平均で時系列的に1.5程度の水準を推移してきており、帰属資産価値としては投下額の5割増しに評価されることが理解される。また、関東や中部・近畿といった都市型地域では社会資本のトービンのqは2.0から3.0の水準に達するのに対し、残りの地方型地域では1.0前後の水準を推移してきたとの対照的な推計結果を得た。