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論文要旨

Vol. 53, No. 4, pp. 337-347 (2002)

『消費者物価のクロスセクション比較について―全国物価統計調査の指数算式についてのノート―』
宇南山 卓 (慶応義塾大学総合政策学部)

物価のクロスセクション比較を行う調査として「全国物価統計調査」が行われている。その調査で計測された物価指数である「地域差指数」が、いくつかの地域において、域内全地域が当該地域の平均を上回るという不整合な現象を起こしている。
 本稿ではこの平均値が不整合なケースを完全に回避する指数算式を構築した。それは基準となる平均価格の算出の際に、現行の「各財に対する各地域の支出額をウエイトとした加重調和平均」ではなく、「財に依存しない共通のウエイトを用いた加重算術平均」としたものである。
 また、構築した算式に対し経済学的な解釈をつけた。地域差指数に新たな解釈は、価格に関する情報が不完全である場合に、購入地点を特定の地域に限定されることによって、同一の財のバスケットを購入するのに必要となる支出額の違い、というものである。他のクロスセクション比較を行う指数算式との関係について考察することが今後の課題である。