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論文要旨

Vol. 53, No. 4, pp. 322-336 (2002)

『1930年代における日本・朝鮮・台湾間の購買力平価―実質消費水準の国際比較―』
袁 堂軍 (一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程), 深尾 京司 (経済産業研究所/一橋大学経済研究所)

我々は1934-36年の日本・朝鮮・台湾間について、50品目を超える絶対価格データと家計調査等に基づく消費ウエイトを使って消費者物価絶対水準比を推計し、これをもとに3国間で一人当たり実質消費水準や実質GDPの長期比較を行った。その結果、1934-36年平均で見た消費者物価絶対水準は、朝鮮は日本の0.86倍、台湾は日本の0.84倍であった。また、台湾と朝鮮を直接比較した場合もこの2つの結果とほぼ整合的で、朝鮮は台湾の1.03倍との結果が得られた。以上の推計結果はMaddison(1995)の推計が含意するGDPデフレーター比(そこでは朝鮮の方が台湾より格段に安かったとされている)とは大きく異なっていた。また、3国の一人当たり実質消費水準を比較すると、朝鮮の方が一人当たりGDPが高かったとするMaddisonの推計結果とは反対に、我々の推計では戦前期において朝鮮と比べて台湾の一人当たりの消費の方が格段に高いとの結果を得た。各国間の相対的な豊かさはGDPの実質成長だけでなく、交易条件変化の影響を受ける。Maddisonの方法は交易条件の変化について無視しているために、遠い過去については現実と乖離した推定結果になっている可能性がある。交易条件が長期にわたって悪化した国に彼の方法を適用すると、この国の過去の豊かさを過少に評価することになるためである。