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論文要旨

Vol. 53, No. 3, pp. 204-212 (2002)

『雇用面からみた世代間利害調整』
井口 泰 (関西学院大学経済学部), 西村 智 (関西学院大学経済学部), 藤野 敦子 (関西学院大学大学院生), 志甫 啓 (関西学院大学大学院生)

雇用面からみた世代間利害上均衡の概念を確立し、その調整を図ることは、人口の少子・高齢化の下で、合理的な政策決定を促す上で重要である。雇用面からみた世代間利害調整に関し、これまで実施した理論・実証的研究の主要成果は次の通りである。①1990年代において、高齢者の雇用保障が若年者の失業を増加させるとの仮説は、マクロ・ミクロの両面から支持できない、②日本の育児の「機会費用」は欧米諸国と比較し非常に高く、このまま女性修業を拡大すれば少子化を促進し、世代間利害の上均衡を拡大しかねない、③労働時間短縮や柔軟化は、家計内分業や出生率の改善にプラスに作用し、世代間利害調整に貢献できる、④「地域統合」の枠組みで人材の国際移動を促進すれば、「頭脳流出」のリスクを抑制し、大量移民受け入れを回避し、世代間利害調整にも効果がある。総じて、世代間利害調整の視点から、少子・高齢化対策と外国人労働者政策の合理的な組み合わせを構想する必要がある。