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論文要旨

Vol. 53, No. 2, pp. 97-116 (2002)

『日本の賃金制度と労働市場―展望―』
中村 二朗 (東京都立大学経済学部), 大橋 勇雄 (一橋大学大学院経済学研究科/経済学部)

バブル経済崩壊後、我が国の内部労働市場の変化について様々な議論が行われている。実際、内部労働市場を特徴付ける年功的な賃金と長期的雇用関係については、近年、これまでには見られなかった顕著な変化が見られる。そのような変化に対して、内部労働市場崩壊論まで含めてさまざまな分析が行われている。しかしながら、必ずしもそれらの議論が体系的に整理されているとは言えない。特に、労働者の労働意欲や、技能形成、転職行動などに大きな影響を与える企業内の「賃金の決め型」については、近年、組織の経済学や人事の経済学などで大きな関心がもたれているにもかかわらず、賃金プロファイル(年功的賃金)との関連ではあまり厳密な検討がなされてこなかった。本論文では戦後の日本における労働市場の動向や賃金の決め型の変遷などを踏まえた上で、内部労働市場に関する最近の理論および実証分析に関する議論を整理するとともに今後の展望を行った。