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論文要旨

Vol. 53, No. 1, pp. 40-52 (2002)

『労使関係と赤字調整モデル』
野田 知彦 (桃山学院大学経済学部)

日本においては一期の大きな赤字、または、二期連続の赤字の場合に解雇、希望退職を含んだ大規模な雇用調整が行われるという経験則が確認されている。本講では、このような上連続な雇用調整を視野に入れた赤字調整モデルを中堅、中小企業のパネルデータを用いて労働組合の有無別に推定した。その結果、赤字期に調整速度が速くなるのは、従業員が300人以上の規模が大きく労働組合の存在している企業であることがわかった。これらの企業では、他の企業に比べて通常時の調整速度は遅いが、赤字期には調整速度が速くなっている。これらの推定結果は、比較的規模が大きく組合の存在している企業では赤字になるまで解雇、希望退職を含んだ大規模な人員整理を行いにくく、雇用調整が遅らされるということを示している。赤字調整モデルの推定から、労働組合の雇用保障に対する効果を確認することができた。