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論文要旨

Vol. 52, No. 4, pp. 315-332 (2001)

『1927年金融恐慌下の預金取付け・銀行休業に関する数量分析―確率的預金引出し仮説 対 非対称情報仮説―』
是永 隆文 (西南学院大学経済学部), 長瀬 毅 (一橋大学大学院経済学研究科), 寺西 重郎 (一橋大学経済研究所)

本論文では、1927年金融恐慌下における銀行休業・預金取付けといった銀行パニックが持つ性質を明らかにする。このパニックは、蔵相の失言に始り、震災手形関連2法案の通過をもって終息した第1波と、台湾銀行休業を契機とし、モラトリアム実施によって中断された第2波に分けられる。我々の仮説は、第1波は非対称情報(AI)仮説に相当し、銀行資産の劣化と情報の非対称性にもとづく通説型のパニックであったが、第2波は確率的預金引き出し(RW)仮説に相当し、期間変換機能の喪失に起因するDiamond & Dybvig型の自己実現的なパニックであったというものである。我々はそれぞれのパニックの引き金と終息要因の違いを確認し、続いて歴史資料の整理を通じて休業銀行の経営状態と破綻原因を調査した。更に東京所在銀行の休業・取付の決定要因を、銀行別データを用いた統計分析によって特定した。その結果、我々の仮説は大方支持された。