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論文要旨

Vol. 52, No. 4, pp. 289-299 (2001)

『日本の金融制度』
池尾 和人 (慶應義塾大学経済学部)

金融取引の円滑な実現を支えるための仕組みや組織、さらにそれらに関わるルールや規制の総体を一括して、「金融制度」と呼ぶことができる。ここでいうルールや規制には、法制的なレベルのもののみならず、慣習的なレベルのもの(市場慣行や自主規制など)も含まれる。そして、金融制度とその金融制度の下で実現される各経済主体の行動パターンの連関を合わせて、「金融システム」と呼ぶことができる。ただし、金融制度という用語を広義に用いて、実質的に金融システムと同義の概念とする用語法もみられる。本稿では、これまでの日本の金融制度に関する議論を1970年代までとそれ以後に分けて回顧し、位置づけることを試みる。なお続く第1節では、本論に先だって金融制度分析の概念的枠組みに関する整理を行う。その上で、第2節では、高度成長期の日本の金融制度とその下で展開された「人為的低金利政策」と呼ばれる政策レジームの評価をめぐる議論を取り上げる。これに対して、1980年代以降の金融制度改革と金融危機をめぐる議論を第3節において検討する。最後に簡単な結語を述べる。