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論文要旨

Vol. 52, No. 3, pp. 231-238 (2001)

『小地域統計の推定手法と応用』
美添 泰人 (青山学院大学経済学部)

本稿で取り上げる小地域統計の推定とは全体としての標本の大きさは十分であっても、個々の小地域ごとに考えると標本の大きさは小さくなるような状況で、各地域ごとの推論にどのような方法を適用すべきかという問題であり、市町村の死亡率が典型的な例である。この問題に対する有効な方法として、地域間の類似性に関する事前情報を活用することが考えられる。実際にも小地域の死亡数を二項分布とし、その母数に事前分布を想定するという単純なベイズの手法や、さらに複雑な経験的ベイズ推定法を用いる手法などが提案されている。これに加えて、小地域の情報以外でも隣接する年齢階級の死亡率が類似しているという情報を利用すれば、さらに精度の高い推定を実現することが可能である。ここでは、そのような手法の例として、できるだけ主観を排除するようなベイジアンの手法を提案し、小地域における死亡率推定への応用を検討する。