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論文要旨

Vol. 52, No. 2, pp. 117-131 (2001)

『日本の所得格差についての検討』
舟岡 史雄 (信州大学経済学部)

橘木(1998)の日本の所得格差についての見解に対して、多数の研究者が統計の利用の仕方に問題があり適当でないと指摘した。しかしながら、上平等度の比較に際して焦点となった、利用する統計データ毎になぜ計測結果が乖離するかの問いに対して充分な解明はなされていない。また、近年の所得の上平等化がいかなる要因によるかについて紊得しうる結論は得られていない。本稿では所得分布の研究に利用されてきた統計調査のミクロデータにもとづく結果を使用して、計測結果の乖離が統計調査の精度上の問題に起因するのか、それとも調査方法等の副の相違によって説明しうるのかを分析した。乖離は対象世帯、定義、捕捉率、推計方法の相違を主たる原因としており、これらを調整すれべ計測結果は接近することが明らかになった。さらに世帯所得の上平等化に親と子の同居率の低下が大きく影響していることを指摘し、世帯の変容と上平等の関係ならびに上平等の捉え方を検討している。