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論文要旨

Vol. 52, No. 1, pp. 61-71 (2001)

『ダルエスサラームにおける生活水準と不平等度の経年変化』
加納 悟 (一橋大学経済研究所), 安居 信之 (在タンザニア日本大使館)

本論文では、タンザニアの大都市ダニエスサラームを例にとり、開発途上国における生活水準と上平等度の経年変化を調べる。途上国に関するデータセットは極めて限られている。本論文では利用可能な二つのマイクロデータセットを利用することにより、1991年と96年の2時点における消費支出のデータを作成し、都市全体および都市内各地区における住民の生活水準および上平等度の変化を定量的に評価する。その結果、この5年間でダルエスサラーム全体の生活水準の向上はみられない一方、上平等度はむしろ拡大傾向にあることが指摘される。その原因として、地区間上平等度が増加したことが指摘される。92年にムササニ地区に日本の無償援助が行われたが、同地区はもともと生活水準の高い地区であったため、援助によってムササニ地区の生活水準はさらに向上し、その結果地区間の上平等度の増加に貢献したことがわかる。これはわが国の援助のあり方を再考させるものである。