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論文要旨

Vol. 51, No. 4, pp. 346-357 (2000)

『流動性効果の検証―日次データによる準備預金需要の計測―』
細野 薫 (名古屋市立大学経済学部), 杉原 茂 (日本経済研究センター), 三平 剛 (経済企画庁)

銀行間市場等に流動性コストが存在する場合には、銀行は準備預金の保有によって流動性コストを節約できるため、準備預金供給の増加が吊目金利の低下(流動性効果)をもたらしうる。我々は、まず、所要準備制約のもとでの銀行の最適化条件から準備預金需要関数を導出し、次に1994年8月から1999年9月までの日次データを用いて、準備預金需要を計測した。この結果、97年10月の金融危機から99年2月のゼロ金利政策採用までの間のみ、流動性効果が存在したことが明らかになった。これは金融危機によってコール市場や債権市場における流動性コストが高まったことによると考えられる。他方、この時期を除くと、流動性効果は認められなかった。これは、コール市場や債権市場における流動性コストが極めて低かったことを示唆している。また、99年2月以降は、コールレートがほぼゼロにまで低下したことも影響している可能性がある。