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論文要旨

Vol. 51, No. 4, pp. 311-320 (2000)

『不確実性と公的年金の最適規模』
小塩 隆士 (東京学芸大学教育学部)

小子高齢化が進展する中では、公的年金の収益性から見て賦課方式よりも積み立て方式の方が望ましいという主張が有力である。しかし、利子率と賃金所得増加率の変動を比較すると、賦課方式の公的年金によって将来所得の上確性が軽減され家計の効用が高められるという効果も存在し得る。公益性と上確実性の軽減は、公的年金の在り方を検討する上で同時に検討すべき重要なポイントとなる。本稿では、日本経済の過去20年間程度において見られた利子率や賃金所得増加率の変動や相関関係を踏まえ、さらに利子率や賃金上昇率、インフレ率に関する政府の公的な見通しを基準としながら、上確実性を考慮に入れて賦課方式による公的年金の最適規模や許容範囲を大雑把に試算してみた。試算結果はパラメータの設定に大きく左右されるものの、将来所得の上確実性軽減という目的だけで正当化できる賦課方式の公的年金の規模は、それほど大きなものではないという点が確認された。