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論文要旨

Vol. 51, No. 3, pp. 232-242 (2000)

『戦前期の技術革新と発明家』
関 権 (一橋大学大学院商学研究科)

本稿の目的は、技術革新と発明家との関係を明らかにすることである。在来産業と近代産業との対比を通じて議論すること、統計分析と事例分析を平行して行うこと、が本稿の特色である。分析の結果、在来産業における技術革新活動と発明家のタイプは、近代産業のそれとは多くの点で異なっていたことが明らかになった。分析から得られた主な結論は次の3点にある。第1に、経済発展の初期には個人的な発明家の役割が大きかったが、後期になると組織的な発明家の貢献が増大した。第2に、在来産業における発明には「需要プル」、近代産業におけるそれには「技術プッシュ」によるものがそれぞれ多かった。第3に産業発展による人材需要に合わせた人材供給(教育)政策が概ね成功した。の10年余の間に、全国で統計講習会参加者は16000人以上に上った。②受講生の多くは県や郡市の書記であったが、彼らは、講習終了後、今度は自らが講師となって、各々の所属する郡市で講習会を開催した。講習会参加者は、この間接的なものも含めれば、当時の各市町村に最低1人ずつ程度の数になる。③多くの講習会で、横山雅男『統計通論』が、教科書として用いられた。同書は、当時の日本における統計実務担当者にとり、事実上の標準としての役割を果たした。それと同時に、今日われわれが歴史的統計データの諸系列を用いるばあいにも、それらが編成される際のバックボーンになった理論を明示的に知りうるという意 味を持つ。