HOME » 刊行物 » 経済研究

論文要旨

Vol. 51, No. 1, pp. 73-91 (2000)

『救貧法から福祉国家へ―世紀転換期の貧困・失業問題と経済学者―』
西沢 保 (一橋大学経済研究所)

本稿は、19世紀末のイギリスにおける貧困および失業問題の認識から、20世紀初頭の社会福祉立法に至る過程を、救貧法から福祉国家へという展望のもとに経済思想と制度に即して明らかにしようとする。まず、救貧法の理念的基礎を提供した「旧派の経済学者」と「新世代の経済学者」マーシャルおよびオクスフォード・エコノミストを対比し、生成途上における福祉国家の理念基礎を検討する。ウェッブ夫妻のナショナル・ミニマム論を考察し、次いで労働行政・福祉行政の担い手であった商務省の「理性主義的官僚」リュエリン・スミスとベヴァリッジを、商務省労働局における労働統計の整備、職業紹介所法、失業保険法の成立過程にそくして検討する。