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論文要旨

Vol. 50, No. 4, pp. 324-336 (1999)

『対西側移民出入国と体制転換後の経済過程―旧ソ連・東欧8か国の比較―』
吉野 悦雄 (北海道大学経済学部)

本稿では、移民データが入手できた旧ソ連・東欧地域の8か国について、体制転換前の西側への移民出国者数、ならびに体制転換後の西側から再帰国者数(移民入国者数)と、体制転換後の各国の経済パフォーマンスとの間にどのような関連があるのかを検討するものである。移民の数が増えるにつれて、高学歴者などアクティブな移民の比率が減少するという仮説を導入することにより、移民出国率と体制転換後の経済停滞期間の短さが相関することを示し、また移民出国率と体制転換後の成長率の落ち込みの少なさも相関することを示す。体制転換を考察する際に、市場メカニズムの導入などの制度改革や外国資本の重要性と並んで、その背後にある歴史的・社会的文化的諸要素の代表変数として移民をとりあげ、これらの諸要素の重要性を間接的に証明することを目的とする。