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論文要旨

Vol. 50, No. 2, pp. 120-132 (1999)

『タイの経済危機と金融・産業の自由化』
末廣 昭 (東京大学社会科学研究所)

タイは1997年7月以降、金融不安、通貨危機、国内不況のトリプル危機に陥った。今回の通貨・経済危機については、経常収支赤字の継続のもとで、国際短期資金の大量の流入とドル・ペッグ制の維持がもたらしたものという見解が強い。また、88年に始まる経済ブームを一括して「バブル経済」とみなし、バブルの崩壊が金融・通貨不安をもたらしたと言う意見も強い。しかし、金融の自由化と為替相場の維持という政策のミスマッチやバブル経済の崩壊だけで経済危機を説明するのは不十分である。そこで本稿は、経済ブーム期の構造変化を概観し、重化学工業化を促した産業の自由化・投資規制の自由化政策を紹介し、同時に通貨・金融政策を実施するにあたって、中央銀行が直面した組織的な問題や大蔵省との対立―制度・組織的要因―についても検討をおこなった。