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所長挨拶
経済研究所長

浅子 和美
ASAKO, Kazumi

経済研究所は、国立大学法人一橋大学の附置研究所として、国の内外における研究者コミュニティの独創的かつ先端的な共同研究の拠点・ハブの形成を目指して、日々、研究活動に励んでおります。また、ほとんどの研究所教員は大学院経済学研究科の演習や協力講座の担当を通じて、大学院教育にも携わっています。本研究所は、1940年に東京商科大学東亜経済研究所として創設され、1949年に一橋大学経済研究所に改組されました。翌1950年には『経済研究』が創刊され、1953年から「経済研究叢書」が毎年刊行されています。

本研究所は、研究所教員のそれぞれの個別研究に加えて、「日本及び世界の経済の総合研究」という設立目的に沿って、多くの共同研究の成果を上げてきました。特筆すべきものは、1960年代に刊行が始まった日本の『長期経済統計』全14巻であり、完結直後の1989年度の日経・経済図書文化賞特賞に輝きました。1995-99年度には、アジア長期経済統計データベースの作成を課題とする文部省中核的拠点(COE)形成プロジェクトに取り組み、成果の一部として第1巻「台湾」を皮切りに、『アジア長期経済統計』(全12巻予定)の刊行が2008年度に始まりました。また2000-04年度には、文部科学省の特定領域研究「世代間利害調整研究プロジェクト」を組織し、年金・ 医療・人口・労働力・環境問題などの国際的共同研究を推進しました。

さらには、2003-07年度には2つの21世紀COEプログラム(「社会科学の統計分析拠点構築」及び「現代経済システムの規範的評価と社会的選択」)に取り組み、2008年度からはそれらを継承・発展する形で、グローバルCOEプログラム「社会科学の高度統計・実証分析拠点構築」がスタートしました。また、2006-10年度には2つの大規模プロジェクトとして、特別推進研究「世代間問題の経済分析」及び学術創成研究「日本経済の物価変動ダイナミクスの解明」(物価研究センター)が推進され、2008年度には近未来の課題解決を目指した実証的社会科学推進事業として「持続的成長を可能にする産業・金融ネットワークの設計」(産業・金融ネットワーク研究センター)も加わりました。

これらの大型共同研究の中には既に一定の成果をあげ研究所プロジェクトとして終了したものや、後継プロジェクトに発展的に改編されたものもありますが、本研究所は、その規模如何にかかわらず、多くの共同研究を精力的に推進し、共同利用機能の国際的展開を進めようとしています。それを担っているのは、すべての研究所教員がいずれかに所属する「日本・アジア経済」、「米・欧・ロシア経済」、「現代経済」、「経済体制」、「経済システム解析」の5つの研究部門、附属施設としての2つのセンター「社会科学統計情報研究センター」及び「経済制度研究センター」、そして2007年度に開設した「世代間問題研究機構」です。

各研究部門については、概ね名が体を表しています。社会科学統計情報研究センターでは、総務省統計局と協力して、学術研究のための政府統計ミクロデータの提供を拡充しています。経済制度研究センターは、日本およびアジア諸国の経済制度の基礎研究を体系的に行うことと、その研究のための国際的ネットワークの中心となることを目的として創設され、時期によって設定した重点テーマは変遷させてきましたが、最近は「アジア・アフリカ低所得国における経済発展と制度」を中心に国際共同研究を推進しています。また世代間問題研究機構は、世代間問題の先端的研究のために中央4省庁等と連携し、国際的な共同研究のハブとして活動しています。なお、専属の研究所教員は配置されていませんが、研究所内組織としては、2007年度に発足したロシア研究センターもあります。もともと民間企業からの委託研究を契機として設置発展させたものであり、同趣旨による他の試みも芽生えています。

2010年度からは、新設された文部科学省の共同利用・共同研究拠点制度によって、本研究所は「日本及び世界経済の高度実証分析」の拠点として認定されました。政府統計ミクロデータの利用環境の整備を中心に、データ・アーカイブ全般の整備・拡充と統計分析手法の開発等に裏打ちされた、産官学及び国際機関との幅広い連携に基づいた国際的な共同研究拠点を形成するのが主な狙いです。より具体的には、年度により多少異なりますが、国際的に卓越した研究者の指導・監督の下に若手研究者の育成を図る「先端学術研究人材養成事業」、所外研究者の幅広い参加を得て実施される公募型の「プロジェクト研究」、並びに「政府匿名データ利用促進プログラム」等の事業を実施してきました。

こうした広範な研究活動を支えているものに、本研究所の歴史の中で確立されてきた肌理細やかな研究支援体制があることを指摘しておきたいと思います。研究支援部として学術出版・秘書室と大規模データ分析支援室があり、事務部の中にも資料室と統計情報センター資料室が配置され、合わせて特色ある図書資料の収蔵に努め、統計情報専門図書室、データ・アーカイブとしての方向性を目指しています。事務室による科学研究費補助金等の申請支援も本研究所が誇る伝統であり、長期間に亘っての高い競争的研究資金の採択率にも反映されていると確信しています。

最後に、繰り返しにもなりますが、研究支援体制を支えるスタッフや研究所外からの共同研究者も含めて、本研究所は組織一丸となり、常に高い公共性と独創的かつ先端的研究成果を維持しつつ、国内外における研究者コミュニティの共同研究拠点・ハブとして機能し発展することを目指しています。もちろん、共同研究の原点に、研究所教員全員の個別研究の蓄積があるのは言うまでもなく、それらのさらなる蓄積も当然の責務と考えています。