2000年4月の経済制度研究センター着任以来、東アジアにおけるコーポレートガバナンスの構造に焦点をあて、ガバナンスの実態に迫るとともに、アジア危機との関連を分析してきました。タイ企業を対象とし、企業の所有権が財閥に集中していることを示しました。また、家族企業がしばしば銀行と密接な結びつきをもっていることを実証し、銀行と密接な結びつきをもつ企業は、97年危機の前後において、より有利な条件での貸付を受けていたことがわかりました。こうした資金調達により、企業は危機から受けた打撃を軽減できました。1997年の東アジア金融危機以後は、家族企業が危機後も存続しましたが、家族企業の数は減り、外国人投資家や政府がそれに取って代わりました。衰退した家族企業は資金難に直面しましたが、ポリティカルコネクションにより、危機を乗り切ったことを実証しました。
現在は、公開企業であるファミリー企業に焦点を当て、経営支配権の分配のあり方における動学的側面に着目し、主に次の3つの研究に従事しています。(1) ファミリー企業が時間の経過とともにどのように拡大発展してきたか、(2) 創業者がいかに企業グループを形成してきたか、(3) ファミリー企業の後継者決定要因について、公開企業として専門経営者に権限委譲するかといった問題を分析しています。特に(3) ファミリー企業の政治的影響力が、政策および経済発展に及ぼす影響については、研究上の特長として、独自のデータセットを構築することが挙げられます。現在1991年〜2005年までのタイにおける企業および銀行の所有構造と役員構造データ、1950年〜2000年までの日本の上場企業に関する家族構成、所有構造、役員構造、財務状況に関するデータベースの構築を進めているところです。