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後藤 玲子 GOTOH, Reiko

教授 / 経済・統計理論研究部門

 専門分野:経済哲学

 科学研究費補助金研究者番号:70272771

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研究歴

ジョン・ロールズは『正義論』で「民主的平等」の考え方を提示した。それが戦後福祉国家の射程を大きく拡張したことは間違いない。だが、その上にも、リベラリズムが共通に抱える「一元主義(モニズム)」の影が忍び寄る。A. Senが提唱した「公共的討議」に基づく社会的選択理論と潜在能力アプローチは、このモニズムを超える手法として注目される。
潜在能力アプローチは、財空間上で定義される予算集合と効用関数に加えて、機能空間上で潜在能力集合ならびに評価関数を定義する。この拡張されたモデルはシンプルながら、強力だ。機能ベクトルに対する本人の主観評価と、本人が実際に選択できる機会集合を明示化することによって、個人の合理的選択という経済学の永遠の課題に新たな光を当てる。
この潜在能力アプローチが、「公共的討議」に基づく社会的選択理論と結びつくとき、財の社会的分配において、多様性の事実に基づく規範的な平等が構想される。すなわち、財を機能に変換する個人の利用能力(いわば生産関数)上の不利性に配慮した「(福祉的かつ行為主体的)自由」の平等である。けれども、その操作的定式化の方法は自明ではない。
私は、個人の合理的選択の構造と意味を、哲学的に再吟味しながら、潜在能力アプローチによってミクロ経済理論を拡張する方法、ならびに、事実としての差異をふまえた規範としての平等理論を探究してきた。
 

現在進行中の研究プロジェクト

近年、グローバルな普遍秩序が希求される一方で、ローカルな相互性が注目されている。経済学もその例外ではない。従来のミクロ・マクロの理論区分が、普遍秩序に対する両サイド(個と全体)からの接近にすぎず、結局のところ、高度に抽象的で一般的な理論に回収される傾向にあるのに対し、ローカルな相互性の視点は、個々人の多様な生と多層的な評価に迫る点で新しい。いま求められているのは、このローカルな相互性の視点を支え、それをグローバルな普遍秩序と結びつける理論と社会制度(「公共的相互性」)の構築であろう。
私の目下の研究課題は、さまざまな自然的・社会的偶然と闘う人々の特殊・個別的な生を例外とはしない「一般」理論に向けて、新たな方法的枠組みを提示することにある。具体的には、調査で実際に観察されるデータをもとに、高齢者一般・要介護者・障がい者グループの潜在能力上の制約を推定すること、ならびに、相互の潜在能力に関する住民たちの認識をもとに、より有効な社会的支援や公的援助の方法を探究することにある。知情意にあふれた実証経済学者らと協働できる経済研究所からオリジナルな経済理論を世界に発信したい。
 

◎キーワード

ケイパビリティ・アプローチの理論的・実証的展開、リベラリズムと現代正義論の再構築、セン理論にもとづく厚生経済学の方法的展開