戦後中国人口の研究に先立って、中国の統計システムを理解することが必要である。中国の人口・労働力統計システムは5つの機関から構成されている( 図−1 )。
社会安全保障、戸籍管理の重要部門としての公安部は村レベルから郷鎮、県、地区、市、省、中央のレベルまで厳密なネットワークを形成している。公安部は統計の機関ではないが、住民の戸籍登録、管理の仕事に随伴して人口統計の集計も行っている。農村部では、村委員会のデータが、郷鎮公安派出所 → 県公安局 → 市公安局 → 省公安庁 → 国家公安部、都市部では住民委員会或いは街道辨事処のデータが区公安派出所 → 市公安局 → 省公安庁 → 国家公安部のルートでそれぞれ集計される。発表される人口数値は月末、年末の数値である。
中国国家統計局はこれまで4回目の人口センサスを実施した。さらに1982年以後、毎年人口変動調査及び不定期の1%人口サンプル調査を行っている。人口センサスの数値は年央数値( 中国の場合は7月1日 )であるので、国家統計局は人口センサス、人口変動調査および1%人口サンプル調査の結果に基づき、公安部の戸籍統計を利用して、年末人口数値を推計する。
計画生育委員会は毎年人口の出生率、死亡率、性別、年齢、特に婦人の合計出生率( fertility rate、中国語で婦女生育率と呼ばれる )のほか、年齢別人口の調査も行っている。生育調査による人口自然成長率は、統計局による人口数値の修正に利用されている。
民政部は毎年全国の婚姻状態を集計発表している。中国人は結婚するとき、先ず、公安機関から戸籍証明書をもらい、民政部門に結婚を申請するが、そのため民政部門は住民の婚姻情報、子供の人数等を掌握可能である。
中国人民解放軍の軍人統計は軍隊内部の特別の統計機関によって調査されており、軍人は一般の人口統計には含まれない。しかし人口センサスには軍人の人数が含まれている。1982年のセンサスでは、軍人数は1982年時点で420万人であるが、1989年以後の軍縮によって320万人となっている。軍人は農村部からの徴兵が多いが、部隊が都市部に駐留しているため都市人口に計上されている。しかし、農村から徴兵された軍人は、3年の服役期間以後農村に戻れば農村人口に変わり、都市に仕事を見つければ都市戸籍を取得できる。