脚注

 

1 国際資本移動問題全般を概観するには須田 (1992)、Frankel (1992)、Obstfeld (1995)、白川・翁・白塚 (1997)、また国際資本移動の理論的な側面については河合 (1994)、Obstfeld and Rogoff (1996) が優れている。最近のアジア内の資本移動については河合 (1996) に収録された論文参照。


 

2 この問題のサーベイとしては白塚・中村 (1997) がわかりやすい。


 

3 この問題については Obstfeld (1995) が良くまとまっている。なお、非貿易財の存在や、異時点間の労働供給と消費選好に関する選好についてより一般的な仮定を置くと、たとえ危険分散が国際間で完全でも各国の消費は完全には連関しないことが知られている。


 

4 投資関数や貯蓄関数へのショックが国に固有のものが多いとすると、資本移動が完全なら国内の貯蓄率と投資率の時間を通じた相関も低いはずである。この問題の実証研究については Obstfeld (1995) 参照。なお非貿易財の存在は貯蓄と投資の相関を高くする (Murphy 1986、Engel and Kletzer 1989、Wong 1990参照)。また政府が経営収支の均衡を政策目標の一部とし財政政策等を運用してる場合にも、貯蓄と投資の相関は高くなる。ただし日本の財政・金融政策について政策反応関数を推定した浅子・加納 (1989)、Asako and Kanoh (1997) の実証結果は一部の時期の財政政策を除きこの仮説に否定的である。財政政策が経営収支に与える影響についてはまた Sachs (1981) が興味深い。


 

5 先進国間の資本移動に関する展望論文として白川・翁・白塚 (1997) がある。


 

6 O'Rouke, Taylor, and Williamson (1996)、Williamson (1996)、Taylor (1996a,b) は西ヨーロッパの諸国、北米、アルゼンチンおよびブラジル等を対象に19世紀後半から20世紀初頭にかけて起きた要素価格の均等化(アイルランド等ヨーロッパの貧しい国と英、米等との実質賃金格差が小さくなった)の原因を分析している。輸送コストの低下やヨーロッパからの移民が要素価格均等化に大きく寄与したという。しかし彼らの分析は資源が豊富で豊かな新大陸の国と労働が過剰なヨーロッパに対象が限られているため、国際資本移動が果たした役割にはほとんど触れられて触れられていない。


 

7 不突合の原因としてはこのほか、直接投資の再投資収益が米穀等一部の国のみで計上されていること(米国は最大の直接投資母国だから、これは世界全体の経常収支合計をむしろ黒字にする)、援助の受払が一部の国で記録記録されない場合があること等がある。


 

8 途上国の交易条件については Lewis (1978) 参照。


 

9 ヨーロッパ人と話をしていると、ブリュッセルにある財宝はコンゴからの収奪により築かれたとか、オランダ人の体格はインドネシアを支配してから良くなったと言った話を聞く。しかし少なくとも19世紀後半以降は宗主国にとっても帝国主義が割に合わない制度であった可能性が高いという。もちろんこの評価は帝国主義に代わるどのようなシステムを仮定するかに依存する。詳しくは O'Brien (1982)、Foreman-Peck (1989,1995) 参照。


 

10 ただし Svedberg (1978) によれば中国等一部の途上国向け投資については直接投資も重要な役割をはたした。近年の直接投資先については千明・深尾 (1994) 参照。直接投資の歴史については Dunning (1993) が詳しい。


 

11 Lensink and Bergeijk (1991) は途上国が国際資金市場で資金調達できるか否かの決定要因につき実証分析しており興味深い。


 

12 国際資本移動の長期的な動向については、以下にあげる研究の他 The Royal Institute of International Affairs (1937),Jenks (1963),Svedberg (1978),Davis (1985),Fishlow (1985),Neal (1985),Stallings (1987)。


 

13 Pollard (1989) は第一次大戦までの英国の対外投資に関する既存の推計を網羅しており、便利である。


 

14 Lucas (1990) は、人的資本の蓄積が当該国全体の生産性を上昇させる外部効果を持つと仮定している。しかし外部効果はわれわれの議論にとって本質的ではないので、以下しばらくは捨象して議論する。


 

15 単純化のため、配当は企業のネットキャッシュフローに等しいとし、また自国内の貸借や株の国内・国際取取引を捨象しているが、これらを考慮しても以下の分析はほとんど変わらない。


 

16 この問題については McCallum,J. (1995)、Wei (1996) が興味深い。


 

17 たとえば Ruffin, RJ. (1984)、Fukao and Hamada (1994) 参照。


 

18 この問題については Leamer (1994、1995)、Mokhtari and Rassekh (1989)、Davis, Weinstein, Bradford, and Shimpo (1996) が興味深い。日本の特化パターンについては浦田・河井・木地・西村 (1995) 参照。