おわりに−今後の課題

 

 本稿で試みたのは膨大な量の戦時華北工場調査に含まれるデータの、ごく一部の考察にすぎない。にもかかわらずそこからひき出される情報が相当に精度の高いものであり、なおかつ中国の近代工業の発展過程を統計的に把握しようとする作業にとって重要な意味を持つことは、ほぼ確認できたように思われる。同時に侵略戦争時期の日本による中国実態調査・研究について十分な整理検討をおこなうことは、元来、戦後の日本人研究者の責務でもあったことを忘れないようにしたい。

 今後、42年華北調査における個別工場ごとのデータを収録してある『北支工場名簿』も参照し、調査結果全体を再整理することが必要であろうし、それを踏まえ、産業別の成長率を推計したり、付加価値ベースの推計を試みたりすることによって、第4節・第5節で試みたような考察をさらに深めていくことが求められよう(18