[付表]マレーシアの貯蓄動員政策に関する年表

 

(1)預金動員機構としての銀行システム

<預金機関の新設>

1956年 Bank of Commerce Malaysia設立

1959年 中央銀行の設立(国内銀行設立促進政策開始)

1960年 大規模商業銀行の設立が始まる

 Malayan Banking(May Bank)、United Malaysian Banking Corporation(95年からSime Bank)

       ファイナンス・カンパニー設立が始まる(銀行業務の補完)

1966年 外国銀行の支店新設禁止、国内銀行の地方展開を支援する優遇措置導入

       大規模商業銀行の設立

       Bank Bumiputra Malaysia、Public Bank、Development and Commercial Bank

1969年 Finance Companies Act によりファイナンス・カンパニーは免許制へ

1970年 マーチャント・バンク導入

1983年 イスラム銀行制度の導入 Bank Islam Malaysian Berhadの設立

1991年 Bank of Commerce MalaysiaがUnited Asian Bankを合併(中位行同士)により上位行へ

 

<預金金利規制と自由化>

1971年 4年以上の定期預金金利の自由化

1973年 商業銀行定期制預金(1年以上)の金利上限規制の廃止

       ファイナンス・カンパニーの預金上限規制の完全撤廃

1978年 商業銀行の預貸金利の完全自由化

1983年 基準貸出金利制度の導入

1985年 商業銀行、ファイナンス・カンパニーの預金金利を2大銀行金利にリンク

1987年 上記の預金金利リンクを廃止(2月)

       商業銀行の基準貸出金利を2大銀行基準金利プラス0.5%以内に制限(9月)

1988年 変動金利NCDの導入

1991年 商業銀行の金利規制の完全自由化

 

 

(2)貯蓄機関

<貯蓄機関の整理・統合>

1948年 共同組合Co-operative Societies Ordinance(配当10%)貯蓄動員の柱

       郵便貯金制度(Postal Office Saving Bank)の導入

1966年 共同組合を整理統合

1974年 National Saving Bank(NSB)設立(Post Office Saving Banking Officeを改組)

       70%以上の政府証券を義務づける運用規制

 

<貯蓄銀行の自由化>

1970年 premium saving certificate(一種の懸賞金付き預金)の導入

1984年 NSBに定期性預金(fixed deposits)の受け入れが認可(11月)

       NSBに対する政府証券投資規制の緩和、60%へ(11月)

1986年 NSB、The save-as-you-earn-scheme(特典付き預金)を導入

1990年 NSB、クレジット・カード・ビジネス(Visa)開始

1992年 NSBに対する政府証券への投資規制を50%へ引き下げ(12月)

 

 

(3)強制貯蓄機構としての社会保障基金

<社会保障基金の設立>

1898年 最初の年金基金(Penang Municipal Provident Fund)

1951年 被雇用者年金基金(Employee Provident Fund:EFP)の設立

       Employee Provident Funds Ordinanceの施行

1962年 教員年金基金設立(1月)

       1961年Education Actの施行により

1971年 社会保障組織(Social Security Organiazation: SOCSO)設立

       被雇用者社会保険法(Employee Social Securities Act)施行

       (工業部門および公的部門の低所得労働者への社会保障基金として)

       70%以上の政府証券への運用規制

1973年 軍隊基金(Armed Forces Fund)設立(the Tabung Angkatan Tentea Act施行)

1991年 Pension Trust Fund Act施行、公務員年金基金(Pension Trust Fund)の設立(6月)

 

<被雇用者年金基金の拡充・自由化>

1951年 被雇用者年金基金(Employee Provident Fund:EFP)の設立

       70%以上の政府証券への運用規制

1975年 EPFへの拠出率(被雇用者月賃金集計額に対する比率)引き上げ(8月)

       10%(雇用者・非雇用者各5%負担)から13%(7%、6%)へ

1977年 60歳前の加入者死亡時に親族への給付金等の支払いスキーム(death benefit scheme) の導入

       低コスト住宅に限定して退職前の給付金引き出しを認可

       55歳時の一括支払いに代わる定期支払いの選択を認可(5月)

1980年 拠出率引き上げ20%(雇用者11%、被雇用者9%)

1981年 貯蓄を基金の残したままで利子の引き出しを認める(1月)

1982年 住宅資金の引き出しを非低コスト住宅にも拡大(住宅所有政策の促進のため)

1985年 EPFの対するマレーシア政府証券(MGS)への投資規制緩和

       (1985年Guidline on Privatizationに対応して)

1986年 1951年被雇用者年金基金法(EPF法)の改正

        退職前給付金引き出し上限の引き上げなど給付範囲の拡大

1991年 新被雇用者年金基金法施行(6月)

        @EPFとSOCSOの運用規制の自由化

           MGSへの年間投資比率を70%から50%へ引き下げ

        A新しい金融手段への投資を認可(promissory notesm bills of exchange, 不動産、合弁事業、

          民営化プロジェクトへの参加)ただし、引き続き海外投資には大蔵省の事前認可が必要。

        B退職前給付制の改善(死亡時の引き出し上限の引き上げなど)

1993年 拠出率引き上げ22%(雇用者12%、被雇用者10%)

1996年 1991年Emplyoees Provident Fund Act改正、自由化と住宅投資の支援

        @加入者は退職金勘定のうち5万リンギを超える分の20%を公認資産管理会社に投資できる

        A子会社として低中コスト住宅への融資機関を設立し、住宅投資を支援

          拠出比率の引き上げ22%から23%へ

 

 

(4)資本市場からの貯蓄動員機構としての投資機関

<国営ユニット・トラスト・スキーム>

1959年 民間ユニット・トラスト会社 Malaysian Unit Trust LTD設立(8月)

       (英国籍ファンドの持ち込み)

1966年 民間ユニット・トラスト会社 Malaysia Investment Funds設立(6月)

1968年 ブミプトラ専用ファンドFirst Bumiputera Fundの設定(6月)

        運用会社Amanah Saham Mara(ASM)の設立により

1978年 ブミプトラ専用のユニット・トラスト導入のための政府機関YNBの設立

1979年 ブミプトラ政策の一環として国営ユニット・トラスト・スキームを導入

        国営持ち株会社YNBが運用機関PNB(the Permodalan Nasional Berhad:PNB)を設立

        PNBがユニット・トラスト会社ASN(Amanah Saham Nasional Berhad: ASN)を設立

1981年 ASNが、ブミプトラの株式保有政策の一環としてユニット・トラスト(ASN)を売出す(4月)

        @売買価格は固定、優遇プレミアム

        A国営企業の株式が簿価で運用機関PNBへ移転

1989年 ASNはブミプトラのユニット保有を促進するために新たなプミプトラ優遇スキームを導入し、

      新ユニット・ファンドASB(the Amanah Saham Bumiputera)を設定(10月)

        @若年層の投資教育のために12歳から17歳までの青少年向けに特別枠を設定。

        AASBへの投資を奨励するために、初期投資をユニット当たり10リンギまで親会社 PNBが肩代わり

        BASNユニットは変動価格ファンドへ転換し、一般投資家の売買を可能とする

1990年 ASN保有者に対しASBに乗り換えるオプションを与える措置を講じる(1月)

1991年 ASNユニットはクアラルンプール証券取引所で市場価値にもとづいて取引開始(1月)

 

 

<ファンド・マネージメント産業の育成>

1983年 証券産業法(the Securities Industry Act)

       ファンド・マネージメント会社は同法にもとづく免許制

1990年 ユニット・トラスト産業の発展促進のために、新たに包括的なガイドラインを導入(9月)

        @当局の監視下にある金融機関の子会社にユニット・トラスト会社の設立を認める

        A運用規制の緩和(ただし、non-trustee securitiesへの投資制限30%は維持)

1991年 ユニット・トラストの規制監督が資本発行委員会(Capital Issues Committee:CIC)へ(4月)

       資本発行委員会が「ファンドの設立と規制に関するガイドライン」を発表(10月)

        @マネージャーとトラスティーの権限・義務・責任の明確化

        Aユニット・トラストの運用規制(ファンド規模上限、流動資産比率、

          non-trustee stockへの投資比率、1企業への投資集中制限、商品・先物・不動産への 投資禁止など)

1992年 低迷していたASMが全国民向けファンドASM First Public Fundを売り出す

       (ブミプトラとノン・ブミプトラの社会的融合政策の一環として導入)

1993年 証券委員会法(the Securities Commission Act)施行

       (同法施行とともにユニット・トラストの監督権限はCICから証券委員会へ)

       証券先物産業の発展奨励とファンド・マネージメント産業の育成を重視

1994年 91年ガイドラインを改訂、ユニット・トラストの運用規制緩和(3月)

       規模上限引き上げなど

1995年 規制緩和政策の一環として投信の自由化、Vision2020ファンドの設定(6月)

       外資系ファンド・マネージメント会社の設立に関する証券委員会ガイドラインが公表(8月)

        @100%海外資本の会社は海外投資家向けの運用に限定

        A国内ファンドの運用は少なくとも30%は現地資本を入れなくてはならない等。

        B外資系ファンド・マネージメント会社は、国内機関投資ファンドを運用できるが国内ユニット・トラストは運用できない等

1996年 ユニット・トラストの規制強化(Securities Commission Unit Trust Scheme1996)(8月)

        投資家保護のための情報開示義務の強化(プロスペタスの強化、広告宣伝活動の改善)

       外資系ファンド・マネージメント会社の設立に関するガイドライン改正(12月)

        @国内ユニット・トラストは証券委員会の認可を得れば、外部のファンド・マネージメント会社に運用をまかせることができる。

          30ユニット・トラスト運用会社のうち、すでに10社は外部マネージャーを利用。

        A外資系ファンド・マネージメント会社も一定の条件(海外で少なくとも1億米ドルのファンドを運用している、

          国内ユニット・に求められている条件を満たしている)会社であれば、国内ユニット・トラストの運用を許可する。

       ユニット・トラストの関する格付けシステムの導入(8月)