4.独立前後の農業生産動向の把握に向けて

 

 独立以降の農業統計と英領期のインドの農業統計を連続させて、その間の農業生産の長期変動を明らかにするためには、いくつかの問題を処理しなくてはならない。

 独立以前の全インドの農業生産に関しては、前述にように、ブリン、シヴァスブラモニアン、およびヘストンによる推計がある。これらの推計と独立以降の推計とを連結するには、まづ、インド・パキスタンの分離による国境の変動の問題を処理しなくてはならないが、これはパキスタン(および、後の時期についてはバグラデシュ)の農業統計についても以下と基本的には同様の処理を行って、インドの処理された農業統計と合算することで、解決されるといってよいだろう。

 前述のように、インドの独立以降、かつての英領地域および藩王国のうち、作付け農業生産データを報告してこなかった非報告地域が次第に減少していった。また、非報告地域についても、穀物と豆類については推定値が発表されるようになったことも前述した。Agrcultural Statitics に、報告地域の変化の面積と地域の概要が毎年記載されているが、詳細は毎年の Estimates の県別の統計を前年のそれと比較することによって、ほぼ掌握できる。だだし、Estimates の県別の統計は、1950-51年から1964-65年までは存在するが、それ以外の時期についてはない。この時期については、Agricultual Statistics の作付け面積統計から、新たにデータが加わった県名を明らかにし、その県の収量の変動はその作物に関する他県の平均変動率と同じ率で変動すると仮定することによって、それらの県のデータが追加されたことによる影響を排除することが可能である。これによって、シヴァスブラモニアン などによる独立前の推計と比較が可能となろう。

 こうした作業によって作成されたデータから、さらに旧藩王国に所属した地域に関するデータを排除することによって、英領インドに関するブリンの推計との比較が可能となる。藩王国の編入以降の旧藩王国地域と英領地域との境界は、ほとんどの場合に県境と一致し、従って、旧藩王国地域の県に関するデータを抽出することはほぼ可能である。ある県の一部が旧藩王国に属して残りの部分が英領であった場合は、両者の面積比に応じて作付け作物の面積および生産高を比例配分することによって、旧藩王国部分のデータを排除することがおおよそ可能であろう。