A.解説



X.若干の追加コメント

本研究は、これで1976年以降の長期経済統計の主要指標の整備ができたのである。ベトナムに関するSNAベースのこのような長期統計が整備できたのが初めてである。資料の制約があるため、いくつかの重要な前提条件が付いた推計ではあるが、現段階において利用可能な資料が最大限利用されたと思われる。

ところで、推計結果を吟味するために、実質GDP(表11)と人口(表1)のデータを利用し、いくつかの発展指標を出してみよう(本文表1)。この表から次のようなことが言える。第1に、1976―80年の期間にベトナム経済が停滞し、GDP成長率が人口上昇率を大きく下回った。重化学工業化戦略の破綻、農業の集団化政策の強化、不利な国際情勢などが原因で あった。第2に、ドイモイ時代に入って(1980年代の半ば)からの経済が好転し、特に1990―95年の期間に8%台の成長が実現できた。第3に人口の増加率が各期間を通じて高い水準にあったのである。これらの点は、これまでのMPSベースのデータや各種の断片的な情報が示したベトナム経済のパーフォマンスとほぼ一致している。