A.解  説



T.はじめに



ベトナムは1993年より国連の経済統計の体系である国民経済計算システム(SNA)の整備を始めた(1992年12月25日付けの83/TTg号の首相決定に基づく)。1992年以前、ベトナムは物的生産システム(MPS方式)に基づいて国民経済の各総合指標、例えば国民収入、社会総生産などを算出していたが、後に見られるように、それらは特殊な概念であるし、行政、教育、文化、医療などの分野に従事する人の活動の結果は計算の対象にされていなかった。いうまでもなく、この算出方法では市場経済のシステム構造と動きを把握できないし、一部の国を除いた世界各国の統計や国際機関のデータと比較できない。このため、上述のように1993年からベトナムの統計総局は国連のSNA方式に基づいて1989年に溯ってマクロ経済諸指標、例えばGDP、GNP、貯蓄、最終消費支出、中間消費などを算出し、発表してきている。

    注)統計総局(Tong Cuc Thong Ke)は計画投資省に付属し、各種の統計を収集・分析・発表している。

本研究の目的は、1988年以前のMPS方式の諸指標をSNA方式のものに換算し、89年以降のSNAベースのデータに接続できるようにしてSNA方式のベトナム長期経済統計を推計することにある。今回(本研究の第1段階)は、南北が再統一した1976年にさかのぼって20年間のデータを整備した。なお、SNAベースの諸指標だけでなく、人口、労働力、主要商品の生産・輸出などの関連データも合わせて収集・整理した。

以下、まずベトナムの産業分類の変遷を述べておいた上、マクロ経済指標の計算・推計の方法と結果を紹介する。その次に、いくつかの関連統計諸表に解説を加え、最後に若干のコメントを出してみたい。